設立趣旨

 優れた美術的才能を持ちながらも一般の作家のように評価される機会を得られず、また十分な対価も得られていない知的障害あるいは精神疾患をもった方たちが全国にそして世界中に埋もれています。また彼らに直接の支援を行うことが多い福祉施設においても、積極的に彼らの才能を伸ばし、彼らに誇りと実益をもたらすような活動を行っておられる施設は限られており、またそれを行うにはヒト・モノ・カネすべての面で現実には難しい状況にあります。また実際の販売においては、従来の方法では福祉に関心のある顧客層に対象が限られる傾向があり、マーケット的には一定以上の拡大が見込みにくい状況があります。しかしながら一方でニューヨークなど海外市場においては障害者アートも高く評価される傾向があり、日本の知的障害者の作品が彼らに十分に還元されることなく高値で売られているケースもあります。
 そこでひとつのあるべき姿として、障害の有無に関係なく、その才能に純粋に焦点を当てて作品を評価し、彼らが一般の作家と同列で扱われる環境を作り、彼らの才能に見合う対価を彼らが獲得できるような社会的な仕組みを構築していくことが必要と考えます。
 私たちはこれまでにも複数の福祉施設と連携して、才能のある作家の発掘、そして市場での育成を一緒に手がけて参りました。これまでに、彼らの手書き文字を活かした名刺作成事業「キセキノメイシ」の運営、さらに絵画展では作品をほぼ完売し、期間中千人以上の来場者を集めただけでなく、近隣企業における事前展示キャラバン、会場近隣の小学生を招待してのワークショップなどの実施、また品川区や東京愛宕ロータリークラブの支援を頂くなど支援の輪の拡大、「キセキノロゴ」企画展示、そして新聞やテレビなどメディアにも働きかけ活動が大きく報道されるなど、彼らの評価を高め、実益に結び付ける活動を行ってまいりました。また海外での評価を高めるためにアメリカポートランドのギャラリーでの2か月にわたる展示も実施いたしました。
 このように多くの方のご協力とご厚意のもとで運営を図って参りましたが、ここにきてワシントンの日本大使館や、大手企業からのご協力を賜る機会が出てきたこともあり、この事業をさらに推進していくためには、事業の透明性を担保し、また我々の活動に賛同する誰もが参加できるようにするために、任意団体ではなく社会的信用性の高い組織にする必要があると考え、ここに特定非営利活動法人になることを決意いたしました。特定非営利活動法人となった暁には、法令を遵守し、適切な運営を行うことで、健全な法人運営が実現できると考えます。私たちはこの活動を通じて、知的障害のある方(mental disabled)で美術的才能を有するアーティストの自立と作品評価を高めるためのエコシステム構築を目指します。  

 平成31年1月28日