障害者アートが生み出す“かわいい”の力 ― ARD推しアーティスト 藤田ひなのさん

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アートディレクターの若尾です。

ARDの“推しアーティスト”第2回目にご紹介するのは、茨城県水戸市の障がい者施設「ひとは」に所属する、藤田ひなのさん(ひなちゃん)です。


一瞬で心をつかまれる、ポップでキュートな世界観

ひなちゃんの作品は、とにかくポップで明るく、徹底して「かわいい」を追求した世界です。

初めて「ひとは」で作品を拝見したとき、私は一瞬でファンになってしまいました。
見ているだけでウキウキと楽しい気持ちになる、女の子の夢がぎゅっと詰まったキュートなイラストとレタリング。

なかでも驚くのは、文字を一筆書きで描いてしまうことです。

このような特徴は、障がいのあるアーティストの方にしばしば見られます。
特異な空間把握能力と言えるのでしょうか。文字やオブジェクトの配置バランスを、空間の中で瞬時に捉えられるからこそ、本番一発で描き上げることができるのだと思います。

まさに目を見張る才能です。

(画像出典:https://art-of-rough-diamonds.org/exhibits/2021-oioi/)


「ひとは」アトリエ『ず〜む』で育まれた表現の芽

ここで、「ひとは」のアトリエ『ず〜む』スタッフの方から伺った、ひなちゃんの成長のエピソードをご紹介します。

小学校3年生になったばかりの春。
ひなちゃんはほとんど言葉を発さず、部屋に入ることもなく、外をうろうろしていたそうです。庭に穴を掘ったり、犬に“泥のごはん”を作ってあげたり——。

スタッフの方は、その時間さえも「表現」として受け止め、見守り続けました。

やがてお友達に誘われて部屋に入れるようになり、ボンドやのり、ビーズを混ぜて色をつけた“ひなちゃん特製”の作品づくりが始まります。そこから、少しずつ世界を広げていきました。

数年後には単語がこぼれ、いまでは文章で気持ちを伝えられるように。
5年が過ぎる頃には、お舟・お城・ロケット・チアリーダーの衣装・文具、そして文字まで、迷いなく一筆でカラフルに描き上げるようになったそうです。


2000枚を超える制作量 ― 表現への圧倒的エネルギー

ひなちゃんが好むのは、カレンダー印刷に使われるようなツルツルとしたコート紙。
多いときには、月に2000枚を超える制作になることもあるそうです。

ご自宅の壁は作品でいっぱいで、まるで小さな美術館のようだとか。

制作スタイルにも、ひなちゃんらしさがあります。
なぜかテレビのリモコンを反対の手に握りながら描くのが定番。学校から帰るとテレビの前に座り、リモコンを持ったまま制作が始まります。

画材は身近なもの。
マッキーのカラーペンで、カレンダーの裏など白くて滑りの良い紙に、スルスルと軽やかに線を走らせていきます。

その迷いのない線こそが、ひなちゃんの魅力です。

制作の様子はこちらからご覧いただけます。
https://www.youtube.com/watch?v=3Q9PDclQruw


「かわいい」をまっすぐ肯定するアート

とにかく可愛いものが大好きなひなちゃん。
ひなちゃん自身も、とても可愛らしい女の子で、ピンクのお気に入りパーカーがよく似合います。

「かわいい」という感覚が、そのまま作品に現れている。
見ているこちらまで幸せな気持ちにしてくれる、まさにマジックワークです。

純粋な“ファインアート”というより、イラストに近いかもしれません。
けれど、ひなちゃんの“好き”をまっすぐに肯定し、世界を明るく照らすその精神性こそが、アートなのだと私は思います。

スタッフの方はこうおっしゃっていました。
「アート活動は発語を促し、生きる力の向上につながった」と。

ひなちゃんの絵は、見る人を幸せで、楽しく、豊かな気持ちにしてくれます。
それこそが、アートの持つ力なのではないでしょうか。